小説家ウィリアムズ

一昨日から花粉症のような症状で仕事がはかどらず、土曜日も朝から体調が悪かったのだが、なんとか午後からレイモンド・ウィリアムズ国際シンポ@日本女子大に顔を出す。「カルスタの元祖」とか「文学理論」みたいなアプローチはあえて取らず、おそらくは確信犯的に「小説家」ウィリアムズ、という像を前面に押し出した企画で、彼の小説をちゃんと読んでない人々(含む自分)には難しかったかもしれないが、それでもユートピアとか、リアリズムの問題とか大きな問題系に繋がるテーマが続出し議論が深化されたし、質疑応答ではウェールズを起点にした越境的な歴史・政治的運動のインパクトがうかがえる話が紹介されたりして、非常に興味深いイベントだったと思う。戦後福祉国家の創設からサッチャリズム、「脱」産業化の問題といわゆる「権限委譲」など、暗黙の前提としての共通の時代経験を枠組みとしてもっと前面に押し出したらさらに議論が盛り上がったかもしれないが、それは午前中にやっていたのかも。懇親会で発表者の一人、Daniel Williamsと話をしていたら、ウェールズの特殊性をどのようにして他地域の経験に結びつけ、展開してゆくのか、必ずしも表面には現れていないかもしれないが、かなり自覚的な努力や戦略が思考されているようだったし、おそらくそういうことをもっと自分たちも考えなければいけないのだろう。しかし、海外から三人もゲストを招いてこういう企画を実現するための関係者の労力がしのばれる。お疲れ様でした。
 ちなみにこの日のメイン・ゲストの一人で、歴史家のDai Smith氏のSmithというお名前はYorkshiremanの家系だそうで、それを聞いてみょうに親近感を覚えてしまった。