境界にまたがれること

Step Across This Line

Step Across This Line


ラシュディのエッセーを集中的に読むのはこれがはじめてなのだが、小説の印象とは違って読みやすく、トリッキーなところがない、普通に知性的な感じ(わりと伝統的なリベラル知識人のようなスタンスか)。アフガン戦争を肯定したりしてそこのところどうなんだろう、と思うわけだが、それとは別に表題のエッセーはとても興味深い。「越境」するのではなく、むしろ「境界にまたがれる」という原初的な経験があったわけで、前者から後者への強調点の移行にラシュディの変化を読み取ることができるのだろうか。


しかし、80年代に一世を風靡したラシュディ、主要作品の邦訳もある程度早くに出ているにもかかわらず、最近はなんだか知名度が低下している気がする。文庫にでも入れればまた違ってくるのかもしれないのに。ほうっておくにはちょっと勿体ない気がする。