つくば

アメリカに引っ越すことになった同居人の友人たちを訪ねてつくばに。以前この地域を訪ねたのは科学万博のころだから、もう二十五年も前の話だ。つくばエクスプレスに乗るのも実は初体験。スーツケース一杯の語学教科書をもらってしまう。がんばらねば。


明日からしばらく嵐の日々が続くが、その前に読んでいた本。


ベケットとその仲間たち―クッツェーから埴谷雄高まで

ベケットとその仲間たち―クッツェーから埴谷雄高まで


昨年末に著者よりご恵贈頂いた本。一方で著者のスタイルは非常に理知的で、整理できるものはひたすら論理的に整理してゆくのだが、そのような整理が行き着く先には、より大きな謎がかってないほど明瞭な輪郭を持って現れる。他方で、ベケットを導きの糸にしながら著者は十人近い近現代の重要作家を縦横に論じており、それを読み進めてゆくといくつかのモチーフが繰り返し立ち現われてさまざまな角度から検討され、書きためた論文を集めたものという成立事情から予期するよりもはるかに緊密な構成をもった本に思えてくる。この読後感をもっともよく伝えるためには、ベケットと埴谷、クッツェーと三島など、一見かけ離れているようにも思える作家たちのそれぞれの作品から一場面ずつを選びだしてきて併置し、意外なほどに類似した印象を抽出することで大胆に展開するスリリングかつ個性的な著者の方法に言及するのがいいかもしれない(56ページと158ページ)。「擬似カップル」についてはさらなる著書も準備中とのことだから、またこれも楽しみ。ご恵贈ありがとうございました。


ところで、ピンターは上でも論じられる作家のひとりだが、それとはあまり脈絡を意識せずに読み始めていて、あれっと思ったのが、次の本から『温室』という最初の劇。


ハロルド・ピンター (1) 温室/背信/家族の声(ハヤカワ演劇文庫 23)

ハロルド・ピンター (1) 温室/背信/家族の声(ハヤカワ演劇文庫 23)


1980年の初演だが、書かれたのは1958年、独裁国家の下の精神病棟のような場所を舞台にした政治劇になっている。病院ものということで何かのネタになるか。当時のNHSではとりわけ精神病院の老朽化が問題になっていたという話もある。しかしこのハヤカワの演劇文庫、いい企画ですね。普段あまり戯曲を読む癖がない僕には、簡単に手に取れるのでありがたい。