インフル

週末、数年ぶりに38度弱の高熱で病院に行ったら、即診断をもらう。お医者さんによると、中高生の流行が一段落して年齢層が上がり始めているということなので、各方面も要注意かも。タミフルが効いたのか、だいぶよくなったが、本日は大事をとって休講。


しばらく机に向かって仕事をする気力もなかったので寝ながら読書、以下を読了。


Under the Net (Vintage Classics)

Under the Net (Vintage Classics)


1954年小説シリーズその2、というわけで、マードックの小説第一作。サルトル論を除けばじつはマードックを読むのは恥ずかしながらはじめてだったりするわけだが、うーん、どうでしょう。哲学的なテーマは分からないわけじゃないけどいまいち求心力がなく、周囲のことを誤解しまくっているわりには女友達に持てまくる主人公にはいまひとつ説得力がない(もちろん、そのような「周囲への無理解」そのものがこの小説の中心的なテーマなんだけど)。


酔った勢いで夜のテムズ河を泳ぐ場面や、パリの夜景と花火など、記憶に残るシーンはあるが、英国映画産業への外国資本の侵入、映画セットを舞台にした左翼と右翼の乱闘、平凡で退屈な病院勤務などなど、長い小説でもないのに盛り込みすぎなようで、どうにもこうにも、ややとっちらかった印象。ディティールの豊かさに味がある小説家なのかな?*1

*1:ちなみに、主人公の友人の哲学者が大学公開講座で教えていたり、ほかのボヘミアン仲間たちはBBCやブリティッシュカウンシルに就職したくて苦労していたりとか、まあ1950年代のロンドンの文化的な若者ってこういう感じだったんだろう、とは思わせる。ただし、やや階層は高め。