翻訳

The Civilizing Process: Sociogenetic and Psychogenetic Investigations

The Civilizing Process: Sociogenetic and Psychogenetic Investigations


以前読んだのはドイツ語原書(1936, 1939)の1982年版英訳だったが、こちらは1994年の新訳を、2000年にさらに改訂したもの。ぱらぱらめくったら読みやすく、はじめからこっちで読めばよかった。"Editor's Note"には、1994年版と2000年版の訳の変更点が指摘されているが、まず第一点目は原書の"habitus"という用語を英訳でもそのまま使用すること。これはブルデューの研究の普及がこの言葉を英語圏にもなじませたから。90年代前半ではまだそれほど普及していなかったらしい。第二点は、1982年版では"instinct"と訳されていた言葉を、すべて"drive"に変更したこと。これによってエリアスがフロイトから大きな影響を受けていたということがよりいっそう明確になるし、エリアスの反本質主義の論旨をそこなうこともない。


ところで、先日法政大学出版局からエリアス批判と銘打った全5巻の大著が翻訳完了、と宣伝されていたのに驚いたのは、大々的な批判が翻訳されるほど、エリアスってそんなに日本で読まれてるの?という疑問があるからで、そのへんは「国家」論の某先生に共感。


3月10日追記:いまふと、なんで自分がエリアスの議論が好きなのか自覚した。「文明化=〈礼節〉の拡大」という論旨そのものが、というよりは、「心理学的なもの」を公的な世界の大きな構造転換そのものに結びつけて考える発想法なんだろうな。Michael Northを読み直しながら。