一体主義(ユナニミスム)とは何か?

昨晩のうちになんとか初稿を書き上げたので(まだまだ準備するべきことは山積なのだが)、本日はちょっとリラックスして授業準備・レポートコメントの合間に読書。ここ数ヶ月という短期間のあいだにぱらぱらめくった書物のうち、3冊までもが、20世紀初頭フランスのジュール・ロマン Jules Romain のユナニミスム Unanimisme (一体主義)*1について言及していたものだから流石に気になり始めてしまった。しかも、よく読んでみるとかなり興味深い。第一次大戦前の芸術的前衛といえば、因襲の否定・形式の破壊・社会への反逆(大部分はたんなるポーズであるとしても)と、エゴイスティックな個人主義がどうしてもきわ立ってくるものだが、ユナニミスムはなんと真逆にも個人の意識を超脱して、都市群集との「有機的」な一体化を賛美するという、とても集団主義的なものであったらしい。ちなみに、同時代で言うと、ロンドン時代のエズラ・パウンドがパリの最新流行としてちょっと言及していたりもするらしい。文学・美術史的に言えばマリネッティとイタリア未来派への影響という見地から語られることが多いようだが、戦後のシュルレアリスムを準備したと言えばいえるようなところもあるらしく、そういう彼のイデオロギー的共感は奈辺におかれていたのだろうか。ロマンについては、ユナニミスムの詩集(『一体的生活 La Vie Unanime』(1908))など出していたようだが、日本ではむしろ小説家として知られているようで、のちには全27巻にものぼる長大な小説集成『善意の人々』(1932-46)など出しているとのこと(このタイトルだけを聞くとあまり読んでみたいとは思えないが……)。1950年代には『プシケ』という小説の三部作の翻訳がなんと新潮文庫からも出ている。どんな話? 今はやや忘れられがちみたいだが、研究者もいるらしい。よくよく読み返してみるとこの作家についてかかれたものを読んだことがあるのはこれが初めてではないらしいのに、今になってちょっと気になってくる。関心の持ち方次第で見えてくるものがこうも違うというのはやはり不思議。


Early Modernism: Literature, Music, and Painting in Europe, 1900-1916

Early Modernism: Literature, Music, and Painting in Europe, 1900-1916

*1:ちなみに、このキーワードでひとしきり検索したら、「都市」、「映画」、「宮沢賢治とオカルト」などの言葉がひっかかってきた。あやしさばりばり……。