夜の来訪者

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)


電車の行き帰りで読了。じつはプリーストリーは初読。なんとなく感じをつかむ。初演は1946年。第二次大戦もようやく終わったこの時期に、時代設定を第一次大戦直前に据えて戯曲を書くのはどうしてなんだろう、と思う。謎の警部の「わたしたちは、一人で生きているのではありません。わたしたちは、共同体の一員なのです。わたしたちは、おたがいに対して責任があるのです」という決めゼリフは、むしろ、この時期だからこそ余計に生々しく響いたのではないかな、と想像。


メタ推理小説みたいなものだろうか。プリーストリーは生涯で約120冊以上も出版した。書きまくっている。ちなみに、解説によると彼はJ・W・ダンの「予知する夢」に影響を受けているとの話。


8月19日追記:駅前の書店で岩波の新刊案内を拾ってきたら、文庫でプリーストリーの『イングランド紀行』(1934)翻訳が上下巻で出ると書いてある。突然のプリーストリー・リバイバル?いや、タイムリーなのか。しかし、最近の岩波文庫の英文学は、ダウスンといい、ガーネットといい、プリーストリーといい、なんかユニークなところを攻めてるみたいで面白い。あと、9月の新刊では、なんとソレル『暴力論』の新訳も出るとか(今村仁司氏最後の訳業…)。サイードも出るみたいですね、すばらしい。