踏み惑う

新宿南口の紀伊国屋書店で資料探し。でも、慣れない分野の書棚なので、まったく見当がつかず、書物の森で踏み惑っている気分になる。土地勘の無い地方に来た感じ。


しょうがないので洋書の棚で新刊チェックなど。こちらも最近ずいぶん怠っていたので、いろいろ面白そうな本が出ているのを見つける。昨今の研究書というと、『〜入門』とか『〜必携』のオンパレードなのだが、どうやらエジンバラ大学出版局もこのトレンドに参入したようだ。先月のメディア学会とタイアップした棚揃えの他に、「境界を越える知としての文学理論」といさましく銘打った理論書のコーナーも。あとは、


Gender in Modernism: New Geographies, Complex Intersections

Gender in Modernism: New Geographies, Complex Intersections


を手にとってぱらぱら。アマゾンの予告ではしばらく前から気がついていたのだが、"ed"を見落としていたので、てっきり単著だと思っていた。実はこれ、れっきとしたアンソロジーなのである。スコットは1990年に似たようなタイトルのアンソロジーを出していて、その時は、当時の正典批判の波に乗って忘れられた女流モダニストを再発掘しよう、みたいなコンセプトで作家別に編まれていた(ちなみに、僕もけっこう愛用していました)。


それが今回のやつはもう主流もマイナーも関係なく、完全にテーマ別の文化研究的アプローチにとっての一次資料として扱われている。全体が5パートに分けられていて、順に挙げると(うろ覚えだけど)、Part 1: Feminism/Suffragism, Part 2: Production and Reception, Part3: Gender and Identities, Part 4: War, Technology, Trauma, Part 5: Arts となっている。パート1では参政権運動系の女性作家・ジャーナリストの文章が豊富、パート2でややユニークなのは、特別にHope Mirrlessに1セクション割いて、"Paris: A Poem"の全文と、Julia Briggsによるコメンタリーを収録してること。パート5には演劇、絵画のほかに映画セクションもあって、H. D.やRichardsonの他にもIris Barryの映画評論を多数収録している。絵画セクションでは、Vanessa Bell, Marie Laurencinなどのスタンダードの他に、離婚した元夫なんかよりも画家としてははるかに才能があったWinifred Nichlsonの短文が収録されている。


かなり便利に使えそうなので、とりあえずは図書館に購入をリクエストしたい。自分でも買うか?900ページぐらいあるが、1年ぐらいかけてゆっくり目を通して資料的価値を検討したら、ちょっと引き出しが増えそうな本。項目別の専門家による解説も魅力的。タイトルはイマイチだが。