『書物の出現』

の共著者だったアンリ=ジャン・マルタン(Henri-Jean Martin)が今年の1月に亡くなっていたらしく、ロジェ・シャルチエがその死を悼んだ弔事を書いていて、その英訳がこちらで読める。


この記事を見つけたときは、失礼ながらちょっとびっくりしてしまった。大方の人と同じく僕が彼の名前を知っているのは主にリュシアン・フェーヴルとの共著があるからで、その原書、_L'Apparition du livre_が出たのは1958年、英語翻訳が1976年、日本語紹介(『書物の出現』)がどうやら1985年と遅いけれども、現代の「本の歴史(History of the Book)」からは間違いなく古典的な名著だと讃えられている。*1ほら、フェーヴルが1876年生まれの1956年死去、世に言う「アナール学派」の第一世代でしょ、だから彼と共同作業をしたマルタンももう歴史上の人物かと思っていたが、じつは彼はずいぶんデビューの早い、早熟な歴史家だった、という話。


つまり、フェーヴルにとっての遺作は、マルタンにとってはまだ出発点でしかなかったわけだ。この記事では彼のその後の活躍なんかも紹介されているので、なかなか興味深い。

*1:ちくま文庫(1998)で出ているのだが、現在は絶版状態で手に入りにくい。再版を希望。