朗読者たち

ふう、ようやく引越しが一段落した。本格的に移り住んでからも一週間程度はなんやかやと手続きで忙しく。やっぱり新しい生活を立ち上げるってのは、大変ですね。それはそれで楽しいものだけど。


読書の歴史―あるいは読者の歴史 (叢書Laurus)

読書の歴史―あるいは読者の歴史 (叢書Laurus)

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)


前者のアルベルト・マングェルは、ブエノスアイレスの古本屋店員だった少年時代に、かのホルヘ・ルイス・ボルヘス(盲目だった)の朗読係を2年ほど務めた経験があるそうで、はじめの章でその経緯を回想している。それはそれは豊かな時間を過ごしたようだ。そんな経験をしたら、もう小説家にでもなる他は無いではないか!本の内容の割には装丁があまり良くないので、何とかして欲しい。


後者は1996年にドイツ語で出版され、のちに翻訳されて世界的ベストセラーになった。アンソニー・ミンゲラの監督で映画化される、という話もあったようだが、それらしい作品が見当たらないので立ち消えになってしまったのか?残念。たしかに映像化するのはやや難しい時間構成になっている気がするけど。


語り手でもある主人公は、獄中の年上の元恋人に朗読テープを送り続けることで、読み書き能力を習得させる。「文盲」であった彼女はその事実を隠し続けたせいで、実際よりも責任ある地位に祭り上げられ無期刑を受けるが、今度は、読み書き能力を得た結果として、彼女はより深いみずからの有責性の自覚を得る。とても苦くて、皮肉で、切ない話。戦争責任の問題について、より反省的なやり方で考えるきっかけを与えてくれると思う。