映画とモダニティ

Andrew Shail, "'She looks just like one of we-all': British cinema culture and the origins of Woolf's _Orlando_," _Critical Quarterly_, vol.48, no.2 (Summer 2006).


ともに19世紀の末に起源を持っているという点では、モダニズムと映画というのは1つの文化状況の2つの異なる現れ方であり、それが並行関係以上のものなのかどうか、そのあいだに安易なアナロジー以上のものが成立しうるのかどうかは、この問題の面白さ・難しさもあいまって永遠のテーマになりつつあるようだ。実際、とても魅力的なテーマだし。


ところで、この論文は、1910年代物語映画の台頭とともに_The Pictures_などの媒体を介して強力に形成された "picture personality" の文化史になっていて、その部分はけっこう面白く読めるんだけど、それを_Orlando_の分析に繋げようとするときの手つきがちょっとあやうい。当事の映画文化の影響を指摘することが、どうモダニズムのイメージを刷新するのか、しないのかはいまいち議論が足りていないような気がしないでもない。なによりも、形式的・文体的革新との関係は?この論文はモダニズムと映画との関係ではなくて、「映画文化」とモダニスト作家との関係を語っていると理解したほうがいいのかも知れない。


どうやら博士論文の一部であるらしいので、そのうち単著になって議論の全体像が解明されるのを期待。