過程への執着
- 作者: 菊池直恵,横見浩彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/11/30
- メディア: コミック
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旧友からのお勧めで早速読んでみる。はじめはとっつきにくいが、しばらく読んでいるとこれがなかなか味わいがあって面白い。基本的には鉄道への不条理な愛で周囲を振り回すライターのヨコミ氏と、その奇矯な行動をサめた目で見つめる漫画家キクチさんとの対比が全て。現在5巻まで出ており、TVアニメ化の予定まであるそうだが、連載は2006年で終わってしまっているらしい。鉄道マニア(「テツ」と呼ばれる人々)のディープな世界が楽しめる。
あらゆる情熱は多かれ少なかれ不条理なものだ(特に、その情熱を共有しない者から見れば)。たぶん鉄道ものめり込んでみたらきっと面白く感じるのだろうが、残念ながら、僕にはこれまで電車に関心を抱くきっかけが無かった。話は変わるが、奇妙なことに、職業上で僕が属している某業界には「テツ」が多いらしい(あくまで主観的な印象)。鉄道を愛すること、この業界に属していること、この2つのあいだには、果たしてどんな共通点があるのか?
その答えは「目的(地)」をとりあえず括弧に入れ、過剰なまでの「過程への執着」を発揮するその姿勢にあるのではないか、とふと思う。
例えば多くの人は物語の結末を知るために小説を読む。絵を見るのはそこに何が描かれているのかを知るためである。ところが、その書かれ方や描かれ方に注目し始めるとき、人は「目的」を宙吊りにし、表象の過程そのものに潜む詩学や政治的な力学に意識を集中する。同じように、「テツ」は通常の人々にとっては通勤先や観光の目的地であるものを括弧に括り、そこに行き着くまでの過程であるはずのものにひたすら愛を注ぐ。この2つの姿勢は、とてもよく似ているような気がする…いや、考えすぎか?僕の業界に鉄道マニアが多いことの説明にはなりそうだけど。*1
ところで(また話が飛ぶ)、このマンガの勘どころの一つでもあるが、どうして鉄道マニアの世界には男性が多い、というか、ほとんど男性ばかりなのだろうか。日本中の鉄道を隅々まで知り尽くした男性はけっこう居てもよさそうだが、あまりそういう女性は想像できない。何故だ?不思議…。そこにはなにか、ジェンダーによる抑圧のようなものが働いているのだろうか?大げさ。
というわけで続きを読むことにしよう。
*1:実はもっと分かりやすい説明がすでに存在している。それは、この業界がいわゆる「鉄道発祥の地」に関わるものであるから、というものなのだが、これは理由としてはあたりまえすぎてそんなに面白くない。