都市とユートピア

夢と魅惑の全体主義 (文春新書)

夢と魅惑の全体主義 (文春新書)


ちょっとユニークな都市論かと思って手に取ったみたが、星3つぐらいか。内容についてはアマゾンのレビューに書かれているとおり。ヒトラーが総統就任よりもずっと以前に幻視していた都市像のスケッチが載っているのだが、それは彼が後にシュペーアを使って実現しようと試みたものそのまま。その妄想力の強さにはあらためて驚かされる。*1


そういえば、ブルーノ・ガンツが主演して話題になった『滅亡Der Untergang』(邦題『ヒトラー〜最期の12日間〜』)にも、彼とシュペーアの作りあげたベルリンの都市計画模型が出てきていた。そのシーンをちらっと思い出す。


イタリア、ドイツ、ソヴィエト・ロシア。独裁者の登場で新しい政体を確立した国々は、その「新しさ」を巨大建築事業で表現することを好んだ。片や、日中戦争当時から敗戦までの日本政府には帝都を壮麗な建築で飾ろうという意識が非常に希薄で、おりからの鉄材使用規制を受けて官庁街にすら木材製のバラックが立ち並んだという話。これは清貧なのか、それとも単なる貧しさか。

*1:同書134ページ。