たまにはマンガも

GANTZ 20 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ 20 (ヤングジャンプコミックス)

何でもない凡庸な日常に突然、大量殺戮のシーンが挿入されたりするのだが、その辺の残酷描写はあの往年の名作、岩明均寄生獣』を思い出させるものがある。それだけではなく、物語の基本構造だけを抽出するとやはり似ている。何らかの宇宙人(もしくは宇宙生命体)による地球へのひそかな侵攻が起こっており、結果として現実が二重化し、主人公たちはそこで「生き(残)る力」を厳しく試される。


ただ、『寄生獣』と『ガンツ』を比べてみて興味深いのはむしろ類似点ではなく、それがどのように相違しているかの方だろう。前者は衝撃的な作品だったが、その衝撃は比較的明快なメッセージによって縁取られていた。20世紀後半の人口爆発への不安とリンクした環境汚染への警告、みたいな(たしかマンガの一番最初にそんなシーンがあったような…)。しかし、後者においては、そのような根幹となるべきメッセージが欠落している、もしくはいまだ謎のままであり、むしろ、作品全体のトーンはそのようなメッセージ性を帯びることそれ自体を嘲笑するかのように微妙に歪んでいる。しかも、おそらくはかなり意識的に。その歪み具合は、SF的な道具立てとか、グラビアアイドルとか、格闘ゲームのキャラとか、超能力者とか、ホスト=吸血鬼とか、いかにもTV的な想像力のネタをパスティーシュとして取り込んでいる部分にも現れているような気がして、うまくは言えないが、案外このマンガは(やや悪意の込もった)微妙な批評性を持っているのではないか。


ちなみに宇宙人たちと死闘を繰り広げなければならない主人公たちは、実は一度死んでしまった人間たちのコピーであると設定されており、その辺で少し「ポストモダン?」とつぶやいてみたくなる。うーん、我ながら意味不明なことを書いてる気がするが…。