インド

現在、明日の準備をしながらキップリングの長編を読んでる最中。

恥ずかしながらこの作家のものはずっと前に岩波文庫で短編を読んで以来なので、なんだか新鮮に感じる。そういえばその間に "Mary Postgate"は(勿論)読んでいるのだが、これはむしろ第一次大戦を背景にした短編として目を通しただけなので、その時は「帝国作家」キップリングとして読んではいなかった。まあ、先入観は持たないようにしたいけどね。途中での感想になるが、文章は知らない語彙が多くて難しいものの、なかなか面白い。徒歩旅行中の風景描写などはとても美しくて、本当の才能を感じる。ディテールの豊富さには驚かされるが、執筆にはずいぶん時間を費やしたようだから(7年ほど)、相当調べて書いたんだろうなぁ。

物語は冒険もの。こういうアドベンチャー小説って当時はよくあったんだろうな、と思わされる。奇妙なのは、きわめて世俗的でしばしば物欲まるだしのスパイ冒険譚と、チベットのラマに代表されるスピリチュアルな探求譚の間を、主人公が自在に行ったり来たりしていて、それでいてそこにあまり矛盾を感じていないらしいところ。マテリアルとスピリチュアルとの齟齬を無理やり解消しようとするところにキップリングのイデオロギー性があるのかな、と予想してみる。*1

さて、この先の話はどうなることか。どうやってオチをつけるんだろう。

*1:このバランスがあからさまに後者に振れると、E.M.フォースターみたいになるんだが。綜合する、と言いつのりながら前者をメタメタにやっつけたりね。