年始
大晦日から新年三日目の朝まで帰省、といっても電車で2時間もかからないぐらいの距離ですが。家事もせずにおせちをご馳走になり、なんだかリラックスして過ごし、翻訳を進めたり小説を読んだりする。しかし、年末から始まった同居人の風邪がなかなか治らず、昨年末から昨日までで近所の病院を四回続けざまに訪問(最初のやつは自分のインフルエンザだった、それから後は付き添いで)。朝晩ひどい咳の音で起きるので、さすがに心配。早く治らないかな。自分は昨日あたりからもう完全に仕事モード(まだ授業ははじまってないけど)。
年末年始に読んだけど書かなかった本。
- 作者: William Golding
- 出版社/メーカー: Penguin Classics
- 発売日: 2008/11
- メディア: ペーパーバック
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1954年小説シリーズその3。一応その1はAmis、その2はMurdochのそれぞれデビュー作。これはどうかというと、Goldingは1930年代に詩集を出したりしているので厳密にいうと違うけど、まあ小説家としてのメジャーデビュー作であることは確か。同じ年なのに、なんだかずいぶんイメージ違いますね、いや、もちろん表面的な話。Goldingは1911年生まれなのでこの小説出版時点ですでに43才、さすがに「アングリー・ヤング・メン」とは呼ぶことはできなかったのか。
読後感としては、イギリス文学に「冷戦小説」というものがあるとしたら、まあこれだろな、と直観的に思う(詳しくはまた考えることにして)。彼は1983年にノーベル文学賞ももらったりしているんだけど、今はどれほどメジャーなのか。
- 作者: Ernest Hemingway
- 出版社/メーカー: Scribner
- 発売日: 1998/04/01
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Hemingway初期のマイナー作品。Sherwood Andersonのパロディとして書かれたらしく、原作を知らないとやや辛いか。一応通読。本来は昨年11月のシンポ関係の資料だったはずなんだけど。なんかインサイダー・ジョークみたいな部分もあり。全編にちりばめられたHenry Fieldingからの引用に興味を惹かれる。
Modern Classics Out of Africa (Penguin Modern Classics)
- 作者: Karen Blixen
- 出版社/メーカー: Penguin Classic
- 発売日: 2001/10/02
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学部生時代に邦訳で読んだことがあるものを十数年ぶりに再読。これは修論審査の準備として。大戦間期の植民地生活が「楽園喪失」のように書かれていて、初読時にはほとんどユートピア的な記述に感銘を受けた記憶があり、今回もやはり、とりわけ自然描写の見事さに打たれつつも、実は農場経営の困難とか、ケニア原住民族との関係とか、植民地の「たそがれ」とか、はるかに複雑な問題を内包したテクストだったんだなあ、とあらためて思う。
ポイントとしては、著者自身が貴族の家系に連なる人で、それゆえに19−20世紀のブルジョワ的西洋文化から微妙な距離感を持っており、その立場から「プロレタリア化」されつつある原住民に大して奇妙な共感を表現しているように思えることか。結局彼女のような独立農場主は大企業化する農園経営に敗北する運命にあったと(ちなみに1937年の出版)。それ以外では、第一次大戦期の経験でけっこう深いトラウマを抱いているような描写もあり。あとはこの時代のケニアが「声の文化」から「文字の文化」への移行期に属しているかのような記述も興味深い。もう少し時代背景から掘り下げてみるのもいいかも。
以下は翻訳関係で流し読み。
- 作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,Ursula K. Le Guin,脇明子
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
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- 作者: フィリップ・K・ディック,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/10/01
- メディア: 文庫
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ディック、やっぱり面白い。
追記
こう書いていると、なんだか優雅な読書で時間を過ごしているかのようだけど、実は提出間際の卒論添削でけっこう疲弊中……とか書くと逆にそれが言い訳じみてますかね、いやホントに。