B級ロマンス?

Dark Princess: A Romance (Banner Books)

Dark Princess: A Romance (Banner Books)


20世紀を代表する黒人人権活動家デュボイスの主要小説、なんだけど……まあなんともはや、ある意味すごい小説です。一週間ほどでいちおう読破するも、最初のほうはなんとも臆面もないロマンスでかなり辟易、だが徐々にあまりにも大袈裟なレトリックに乗せられてしまう。この時代の人種差別問題とか、一部の黒人富裕者層のリアルポリティックスとか、真の大衆運動の理想を追求して絶望すれすれの主人公のジレンマとか、矛盾とか破綻の氾濫という点ではとても面白い作品。その後、


The Cambridge Companion to the Harlem Renaissance (Cambridge Companions to Literature)

The Cambridge Companion to the Harlem Renaissance (Cambridge Companions to Literature)


から、William J. Maxwell, "Banjo meets the Dark Princess"を。ディアスポラという見地から、世代的な対立ばかりが強調されるデュボイスとマッケイを結び付けるというなかなかに面白い論旨。この『バンジョー』という小説はぜひ読んでみたい。ついでに、


転回するモダン イギリス戦間期の文化と文学

転回するモダン イギリス戦間期の文化と文学


のNさんのご論文も再読。この小説は「人種」という概念そのもののロマンス=ファンタジー性(精神分析的な意味での)を図らずも暴露しているのだ、という話。なるほど。ということは、これはある程度までは自覚的なパロディとしても読めるということなんでしょうかね。