拷問室のなかの緑野


後期の授業で扱うテクストの映画版を見る。イギリスでそのものずばり1984年に制作・公開されたものらしいが、廃墟の映像が印象深く、さらに、物語の中盤で主人公ウィンストンとジュリアが逢瀬に出かける幻想的(ユートピア的)な緑地のイメージが繰り返し"Room 101"に回帰してきたりして、いろいろ考えさせる。


文学作品の映像版というのはどうしても原作の劣化コピーみたいになりがちだけど、この映画は原作の内容をある程度忠実に残しつつも、独特の映像美を駆使することで独自の世界を構築するのに成功しているのではないか。*1


一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)


ご恵贈ありがとうございました。

*1:制作年度を考慮すると、これは、じつのところ同時代のヘリテージ映画に対する批評性を含意しているのかもしれない、と考えるとまた興味深い。