さらば青春


1960年代のイギリス、「モッズ」と呼ばれた下層階級の青年たちのけっこうカッコ悪い青春群像劇なわけだが、主観的な思い入れと客観的な観察とで大きなズレが出てきそうな印象。幼馴染に「他人と違う誰かになりたいんだ」と心情を吐露し、そのために「モッズ」の衣装、スクータ、彼女、仲間etc一式取り揃えて意気揚揚の主人公の狭く汚らしい場末の世界と、その外側にある、いかにもそういう若者たちをマーケットにして、消費文化を煽り立てることで業績を上げてゆく企業人たちの表の世界。


主人公はそうした会社のひとつであるらしいタバコ企業の宣伝部で社内書類配送の末端仕事をしているわけだが、そういう自分がマーケット化されていること自体には幸福にも無自覚なままだったりする。主人公を含む下層階級の若者たちの貧弱な体つきと、エリートビジネスマンたちの立派な体格の違いは、そういうところにすら階級の違いがありありと出てしまうこの国特有のちょっと嫌な部分をえぐりだしている。


そのいっぽうで、ブライトンでの暴動の場面、最後のシーンの白い崖など、印象的なシーンはけっこうあって、視覚的には意外に美しい映画だったりもするかもしれない。


この時代の若者は、若者としての自分自身を「殺す」ことでようやく「大人」らしくなっていく、というような話なのか? 「成熟」の困難。