言論の

よし、来週は休みだ。4月はあまりの自転車操業に死ぬかと思ったので、ここは一つ腰を落ち着けて勉強したいなあ、などと今のところは甘い観測。やることは山積。



一昨年まで和書の手に入りにくい環境にいたので、あまり日本における先行研究の蓄積には注意を払えないでいたのだけれど、帰ってきていろいろ調べて見ると面白そうな研究書が見つかることが多い。嬉しい。というわけで、今読んでいる本。分野としては思想史に近いのだろうが、著者はかつての新聞研にお勤めだったようだ。


4月30日いちおう読了。おおまかに言うと、ピューリタン革命当時のさまざまなセクトの対立、多様な立場から提出された寛容論などを比較検討して、ミルトンの『アレオパジティカ』が占める神話的な地位を相対化する、という内容で、当時の「活字圏」の活写など、勉強になる。リルバーンとか、ロジャー・ウィリアムズとか、いろいろ知らなかった固有名も出てくるし、1640年代のパンフレット*1の分析など、説得力もあるのだけれど、そうはいってもミルトンの出版の自由擁護のレトリックが、読めば素直に感動させる「力」を持っているのも実感なわけで、そのあたりはどうなんだろう。


歴史化の作業がミルトンの(我々と共有する)矛盾を抉り出す、という目論見は良いとして、そこまで「文学的」な読み方を相対化する必要もないと思うんだが、そこらへんをもっと上手く両立できないものだろうか。まあ、『失楽園』の分析を投げたくなる気持ちには、なんだか共感してしまうけど(笑)。

*1:ちなみに、同時代のジョージ・トマソンによるコレクションは日本の図書館にもマイクロで入っているようだ。その数なんと約2万3000点。