印度への道

Penguin Classics Passage To India

Penguin Classics Passage To India

ようやく読み終わった。10年程前に文庫(翻訳)で通読したので二度目なのだが、たしかその時も読み通すのに苦労したような覚えがある。単純にストーリーテリングの観点からすれば、決して上手い作品ではない。なにしろ、物語の核心となるはずの事件が起こるのもようやく半分すぎてから、その事件もあっけなく終わってしまうし、それ以前はといえばAnglo-Indian社会のカリカチュア的な描写に終始しているような。英国人側とインド側の架け橋として期待される登場人物であるムーア夫人やフィールディング氏なども、そもそものはじめから融和の可能性にはかなり醒めている。おそらくフォースター自身の政治的現実への冷静な認識の所産なのだろう。だが、まったく大団円を予期せずに人間関係の中に摩擦と齟齬ばかりが積み重ねられてゆく展開では、読ませる魅力が少なくても仕方ない。


 勿論、つまるところフォースターは厳しい現状認識に忠実に仕事をしたのだ、ということなのだろうが。にしても、「表象されえない」、「語りえない」部分が大きすぎるのではないか?


 小説の最後の部分、フィールディングの結婚とムーア夫人の2人の子供たちの登場は取ってつけたような印象を与える。もしかしたらこれはわざとなのかもしれない。伝統的な小説のパロディ?ラルフとステラはいかにもこの小説家らしく、スピリチュアルな存在だと想定されているが、こういう使い方はちょっとずるい感じがする。彼らはほとんど描写されない(もしくは、され得ない)。


 もう少し慎重に読み直してみるべきだろう。どうも読み終わったばかりの印象はあらさがしに陥りやすいみたいだ。


 思いつき。ポストコロニアル社会を舞台にしたセクハラ小説、というサブジャンルはないかな…。