近代印刷の「起源」


 ひさびさに大学に行って資料収集。午前中早く出てちょっと時間があったのでずっと以前から気になっていた印刷博物館に向かう。JRの飯田橋駅を降りて首都高速沿いにてくてく歩くことおよそ10分、写真のトッパン小石川ビルのB1Fに入っている。流石に平日の昼間だからか、お客は他に誰も居らず、展示物の監視をしてる係りの人たちのほうが多い(汗)。充実した展示なのになぁ…。

 展示内容については以下のサイトを参照。

 http://www.printing-museum.org/


 ここ数年の僕の問題設定の基底にはつねに出版とか印刷とかいうタームがある、ハズ、なのだが、正直なかなか自分のなかでのイメージが具体化せず最近ややあせりぎみだった。Print Cultureとか、Book Historyとか、ひとくちで言えば簡単そうだが、印刷術だけを取ってもグーテンベルクの15世紀以来ゆうに500年は経っている訳だし、技術革新や、近代的な作者・読者概念の生成、権力との交渉の舞台となる検閲、市場の行為主体としての印刷者・出版社・書籍商、そして出版全体を支える法制度、実のところ膨大な数のサブテーマが内包されている。アプローチにも勿論いろいろあり、「本」についての唯物論的関心は別にここ数十年の歴史学(特にフランス系)の専売特許ではない。伝統的な書誌学とか、一群の愛書狂(bibliophile)たちとか。


 こうしてちょっと列挙するだけでもやんなきゃいけないことの多さにため息が出そうになる。


 でもそういうため息というのは、往々にして単に自分のやるべき所を具体的に把握し切れてない徴候なのであって、うだうだ考えずにごく基本的な地点から再整理すると良い。やはり読んでるだけだと書物はなかなかモノとしての本性を明かしてくれないので、そういう時はあえて読まずに具体的なモノに向き合って凝視してみる。で、やっぱり発見がありました。つまり印刷術の発明そのものと、産業革命を経た近代印刷はやっぱり根本的に違うってこと。それに応じて、それぞれの時代に特徴的な問題設定もまた大きく異なるのだ。あらためて考えるとごく初歩的な整理のはずなのだが、僕は抽象に走りがちなのでどうしてもそういうのがよく疎かになる。都合、1歩前進0.9歩後退、ぐらいかな。


 軽い読み物だけど以下の本もヴィジュアル・エイドとしてはかなり役立つ。でも、やはり印刷機の実物には敵わない。
 

本の歴史 (「知の再発見」双書)

本の歴史 (「知の再発見」双書)

 印刷博物館はもっと大々的に宣伝すれば良いのに。いや、これを面白いと思う僕の感性がマイナー志向なのかな…と思わず自問。いや、はてなダイアリーにだって行ってる人たちは沢山居るみたいだし、そんなことはない、と妙に勇気づけられる。迷走中?