エドノユーワク

 ボストン美術館所蔵肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」at両国・江戸東京博物館に行ってきた。

 すごい人混みで、チケット売り場から少し並んでいる。人の後ろから絵を覗き込むものだから、首が疲れた。

 いろいろあるなかでは、やはり葛飾北斎、あとは宮川長春などが良い。

 まず北斎については一番展示作品数が多いこともあるけれど、作品の種類の豊富さが面白い。掛軸だけでなく、端午の節句の幟に朱色で描かれた鍾馗像、袱紗の中央で踊る獅子像、枕屏風に出現した極彩色のアヤシげな鳳凰、提灯の表面に張り付いた龍,etc...画面を選り好みせずに、ありとあらゆる平面に描きまくる北斎の旺盛な創造への衝動が伝わってくるような気がした。即興で描かれたのではないかといわれる猪像の背景の薄墨には座敷の畳の跡がくっきりと残っていて、あたかも北斎その人がつい先日まで生きていたかのような錯覚を覚えさせる。生きた息吹を感じさせる画家。

 宮川長春については恥ずかしながら僕は知らなかったが(浮世絵は得意分野じゃないので…)、あとで調べてみたら実はけっこう有名な肉筆浮世絵画家だったらしい。特にその美人画は、「優麗にして犯し難い貴賓を備えた下ぶくれの顔立ち」を持ち、当時の「世に『長春美人』と持てはやさ」れた、とのことである。*1展覧会では何の予備知識もなかったのだが、長春の「女舞図」にはやはりそこはかとない気品を感じ、はっとさせられた。ボストン美術館のサイトを参照。*2


 江戸東京博物館菊竹清訓。いつみても奇妙な建物である。
  

 そのすぐ近くにはいつのまにかNTTドコモ墨田ビルが建っており(建設は2004年のことらしいから、すでに2年前)、JR両国駅から良く見える。ここの1Fにはなんと携帯電話の歴史を展示するスペースが入っているらしい。いつのまに携帯電話ですら歴史を持つような時代になったのか…。