葉蘭

Modern Classics Keep the Aspidistra Flying (Penguin Modern Classics)

Modern Classics Keep the Aspidistra Flying (Penguin Modern Classics)


映画版を観る。1997年の公開で、そのときのタイトルは_A Merry War_となっていたみたい(日本では公開されなかった?)。小説そのものはずいぶんやるせない話だし、とりわけ、やむにやまれぬ自己破壊的な下降衝動に駆られる主人公のGordon(詩人志望の元コピーライター)の行動はひたすら「イタい」の一言なんだけど、映画では主人公が酒で大失態を犯し、バイトをしていた古本屋を首になってテムズの南あたりに落ちぶれてゆくあたりから、不思議と面白くなってゆく。


1930年代の街並みに見える階級の違いというか、いまではわりときれいになったという噂のランベスのワーキングクラス界隈を見せてくれるあたりとか、小説を読んでいたときにはそこまで鮮明に分からなかった部分が出ていて、これがなかなかよい。階級システムについての部内者的な知識こそが、帝国失墜以後の「イングリッシュネス」の核になったのだ、というKallineyの議論を思いだした。


Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness

Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness


ちなみにこの映画では主人公のガールフレンドRosemaryがポスターアートのデザイナーということになっていて(原作ではファッションプレートの画家)、Gordonのコピーと組み合わせて商品をプロモートしたりする。シェルとか地下鉄とか、この時代のポスターアートとハイブラウの画家たちについてはいろいろすでに研究があるけど、文学者のほうでも、本当は詩人志望だったがコピーライターになった、みたいな人が、当時は(も?)いっぱいいたんでしょうかねえ。そういや、これも詩人の話だ。